審査に不安
審査にあたって、申込書類の中で何をどのように見ますか?
保証会社審査に任せているので、自社の審査基準書がなく、どういった審査をすればよいのか、不安に思われている方も多いと思います。
保証会社がどのような審査を行っているのか、何を見ているのか、が分かればよいのですが、
ここは、ノウハウやコストをかけていますので、安易に教えてもらうことはできません。
審査といっても管理会社の審査は、入居受け入れする対象者かといった審査が主で、保証会社の審査は、賃料支払いの連帯保証人になれるかといった審査が主になりますので、
目線の違いは、あるかと思われます。
しかし、自社保証をするとなれば、この両方の見方をしなければなりません。
自身でできることとできないこと、できないことはありますが、まず、自身できることを保証会社の目線でみていき、今後、「引き受け基準」と「審査基準」をつくっていきます。
【引き受け基準】
専門の保証会社の審査はプラス要因をどれだけ見れるかを基本としていますが、人が審査をしますと、どうしてもマイナス要因を見てしまいがちです。
プラス要因よりマイナス要因の方が見つけやすいためです。
マイナス要因を見て、それをカバーできるプラス要因を探すといったことになります。
また、大きく違うことは、専門の保証会社は、専任の督促要員がいて、回収能力が高いことがあります。
これは、審査と直結しており、回収結果が高ければ、審査承認率も高くできます。
どうしても自社の場合は、ここが不足しますので、審査を慎重に行っていくことが多くなってきます。
この相反することをバランスよく行っていくことが、成功の鍵になります。
それでは、保証会社としてどのような審査をすればよいのか、会社によって違いはありますが、何を見ていくのか、成果物、提出物から見ていきます。
審査に必要な書類として
① 保証申込書 ②本人確認証 これに ③ 社会保険証と申込者の属性(正社員、個人事業主、アルバイト、外国人など)によっての証明書になります。
保証会社によってみるポイントは違いますが、書類で判断するとなりますと、引き受ける側が見れることは限られます。
しかし、記入された申込書の成果物は、どういった傾向の方か、出てくることも多々あります。
保証申込書につきましては、まず、全体的に記入項目をきちんと埋めているかを見ます。
これは、几帳面な人か、ルーズな人かの大まかな判断になります。
きっちり埋めている人と空白が多い人で、同じ内容でしたら、引き受ける側は、どちらをとるでしょうか?
その記入項目を見て、審査をしますので、あまりにも空白が多いと、書きたくない理由があるのではないかとか、記入項目に「必須」を書いてあるのに記入がないと、何を見ているのかとか、自分で書けることと書けないこと分別していると疑ってしまい、マイナス要因になってしまいます。
申込者の記入洩れチェックをされず、そのまま保証会社に提出していることも大きいですが、保証申込書に記載されている項目は、「これを見たい」という受け手側のメッセージでもありますので、どれにも該当せず、書けないという以外は、記入することが重要です。
また、訂正事項があった場合、訂正をきれいに定規などで二重線を引いているのか、手書きで乱雑にしているのかを見ています。
本人確認証として運転免許証がありますが、最近は、画像で送られてくることもあり、その取り方1つでも印象が違ってきます。
仲介会社でこう取った方が、鮮明にに見えるといったアドバイスをすればよいと思うのですが、出し手と受け手の違いで、意識していないことが多々あります。
真上からきちんととっている人、自分の手の影が大きく写っている人、斜めからとっている人、様々ですが、自分を証明する写真になりますので、できるだけ影を作らず、真上からの写真で鮮明にすることです。
気にならないような影でもFAXでは、黒い部分を見てしまい、真っ黒で見れないことが多いです。これは、双方にとって、取り直しや、薄くコピーして送るなど手間がかかってしまいます。
こういったことは、小さく、細かなことですが、審査の中でプラスにもマイナスにもなり、内容とは違いますが、受け手の印象は大きく違ってきます。
次に、本人確認証、社会保険証と申込書との突合せです。
以下は、あくまで一般的な見方になり、疑問がでるかどうかになりますので、違う場合があることをご了承ください。
運転免許証の何を見ているのか、名前、生年月日、現住所と失効回数が主になります。
現住所につきましては、申込み住所との違いがあるかです。
実家が別にあり、ご両親など、どなたかが住んでおり、住所変更の手続きをしていないで相違している人は別ですが、申込み住所と免許証の住所が違う場合、免許証の更新案内が届かなくなってしまう恐れがありますので、一般的には、住所変更手続きをとるはずです。
免許交付日、有効期限、裏面の住所変更記載内容含め、期間を見ます。
免許交付日については、新たに取得した場合、更新して取得した日が記載されていますが、
直近の日付けが記載しているにも関わらず、申込み住所と違う、また申込書の居住年数と矛盾していることがあります。
【申込書】申込日:令和4年8月1日 免許交付日:令和4年7月7日 居住年数6年
申込み住所:東京都新宿区新宿1-●-●
免許書住所:東京都渋谷区渋谷1-●-●
で住所が違う場合、「?」になります。
7月7日に交付された住所の渋谷に6年住んでいるという前提ですが、申込書では新宿です。
約1ヶ月で何かあったのかという疑問が出てきます。
事情があってこうなることはありますが、居住年数を1ヶ月として記入していないのは、何故か、といったことが出ます。
また、免許証の表裏面含め、短期間に何度も住所変更をしているケースもあります。
おおよそ6ヶ月~1年以内で何度も変更しています。
これに申込み住所、居住年数が違うとなりましたら、大きな疑問が出ます。
有効期限につきましては、直近に有効期限が迫っている、期限オーバーしているのに住所変更をしていないケースです。
有効期限の間際に引っ越し、住所変更手続きをしていないということは考えられますが、
あくまで、申込書に記入した住所と違うことは、手続きをしないままにしていたか、
短期間で更に引っ越しをされるかの場合を考えます。
こういった場合も居住期間と転居理由を見て、矛盾していないかを見ています。
失効回数につきましては、分からなかったという方も多いですが、免許番号の末尾の数字になります。破損による再発行はカウントされませんので、紛失による再発行回数になります。
専門の保証会社では、3回(末尾3)までは引き受けるという基準にしていることが多いです。
更に慎重にすれば、これに年齢も加味していくことです。
20歳で3回の方と60歳で3回の方では、経過年数での意味が違ってきます。
3回はまれにありますが、5回以上は、ほとんどありませんでした。
個人情報漏洩問題の時代に本人を証明するものとして使われますので、一般的には大切に扱い、無くさないように意識しておくと思われますが、そうではない方と思われてしまいます。
あくまで連帯保証人になることを想定し、支払期日までにきちんと支払ってもらえるかの見方になります。
社会保険証につきましては、運転免許証をお持ちでない方の本人確認としてみますが、
健康保険証において、主には在籍確認になります。
勤続先と一致しているかの見方になりますが、任意継続加入をされている方もいらっしゃいますので、特に転職理由で退職されて間もない方など一致しない場合もございます。
健康保険証につきましては、ご自身で裏面に手書きで住所記入ができますので、住所確認の信頼性は低くなってしまいます。
また、国民健康保険証では、在籍確認はとれませんが、住所確認はとれるようになります。
国民健康保険証でよくあるケースは、勤務先が株式会社で勤続年数が数年ある方で、国民健康保険証を提出する方です。
本来は、健康保険証が会社から出されるのですが、出されていないことに疑問がでます。
これは、収入のもとになる勤務先にも疑問がでます。
勤務先と個人とで業務委託契約をされていれば、国民健康保険証でも矛盾しないのですが、
正社員して申込みしている場合は、矛盾してきます。
あとは、国民健康保険証では、有効期間の確認になります。
国民健康保険の保険料を滞納されますと保険証更新の際に交付日より有効期間が1年より短期間になりますので疑問が出ます。
これには、行政の一斉更新時期や直近での適用開始日なども照合して矛盾がないかを見ます。
このように、審査において、申込み内容、本人確認、在籍確認に矛盾がないか、矛盾があるとしたら、その理由は何かを、提出される書類にて照合していきますので、運転免許証と社会保険証の同時提出をしていくだけでも審査精度はより高くなります。
この他、申込みされる方の属性により見るポイントは出てきますが、どういった方の保証を引き受けていくのか、きちんと取り決めをしていくことが大事です。
自社で審査をし、賃料債務の連帯保証人になりますので。
次に申込みがあった人の内、どの程度、審査承認をするかといった割合を見ます。
ここは、私見になりますので、参考程度にしてください。
滞納しなそうな固い人を引き受けようとした場合、各社でその割合、基準は違いますが、おおよそ、何割くらいを引き受けるのかの想定をします。
どれ位の売上、利益をあげるかに左右されます。
全申込み者に対し、30%くらいとみるのか、80%くらいとみるのか、全て自社で引き受けるのかによって大きく変わってきます。
おおよそ、引き受け判断が付く人割合は、引き受けできる人が約60%~70%くらいで、約10%は引き受けできない人、残りの約20~30%くらいは、「?:分からない、判断がつかない」といったことが今まで、自社保証をしている人の声です。
固く利益を出したいという方でしたら、自社管理物件においての月契約数の約60%~70%くらいが保証会社の契約数になります。
専門の保証会社の承認率は90%以上になっており、これ以下ですと、厳しい会社と言われてしまうことが多々あります。
管理会社から見て、承認率90%以上ですと「使える」、80%~90%くらいですと「厳しい」、80%以下ですと「使えない」と言われてしまうのではないでしょうか。
これは、管理会社が専門の保証会社使うときです。
自社保証会社の場合、この数字をみてどうするか、を考えます。
60%では、思っていた利益と違うので、80%くらいを目安にしてみる、そのためのリスク回避として、外部データベースを使うといったこともあるでしょう。
自社保証会社が、すぐに使えるデータベースとして、電話履歴データ、新聞記事データ、反社データがありますが、データベース利用料がかかりますので、一定規模以上の管理をお持ちの方しか使えなくなってしまいます。
他で承認率を上げようとしますと、将来のリスクを見込んで、資金を入れておくことになります。
これもなかなかはっきりしないことになりますので、資本投下しにくいと言えます。
事業開始から期間が経過し、滞納、回収率が見えてきましたら、審査の受け入れ基準を変えていくことは可能になりますが、資金余力が少ないスタート段階では、引き受け、審査基準を十分に考えておく必要があります。
最後に審査について、どういった方法があるのかを見ていきます。
引き受け基準書、審査基準書をつくれば、安心と思われますが、実際に、思ったより滞納が出てしまうこともあります。
書面での審査は、私たちでは、「想定審査」といい、この人は、将来的に滞納しないだろう、滞納する可能性があるといった審査になります。
この想定審査は、もちろん一定の効果は得られます。
過去データより分析し、スコアリングし、最適化を図る方法もありますが、これから始める方にとって、現実的には、難しいと言えます。
しかし、この想定審査には限度があると思っています。
下の図は、違う保証会社で6年間の経ったときの滞納グラフになります。
いずれも想定審査を行っていました。
このグラフは、横軸に滞納発生件数、縦軸に滞納発生期間をとっています。
滞納発生件数は、同一の人が重複せず、未収になった件数になります。
ここでの未収は、賃貸借契約の支払い約定日より1ヶ月経過している人の件数をとっていますので、うっかり忘れなど1ヶ月以内に支払った人は、カウントしていません。
滞納発生期間とは、契約して何ヶ月目で未収となっているかをみています。
つまり、滞納して1ヶ月以上経っている人が契約から何ヶ月目で発生しているを示したグラフになります。
このグラフを見ますと、契約して1ヶ月目は比較的、滞納発生件数が少ないのが分かります。これは、最初に契約時金として翌月分まで支払っていることが多いためです。
2ヶ月目~6ヶ月目までの間に、滞納件数が大きく増えています。(赤丸部分)
それ以降、徐々に減少しています。
左側のグラフの最後の2つの期間が少し高くなっていますが、13ヶ月目~18ヶ月目と19ヶ月目~24ヶ月目の累計となっており、1ヶ月単位ではありません。
ここでのポイントは、契約してから2ヶ月目~6ヶ月目の半年以内に滞納し、全滞納者の75%以上を占め、契約して1年以上滞納がない人は、滞納する確率が低くなることが言えます。
保証会社として、この半年以内の山を低い水準で平準化できれば、事業継続性がさらに高まると言えます。
期間が経過し、同じようなグラフを示していることに想定審査の限界があるのではないかと思っております。
身近な審査基準の中でも無職の方の申込みがあった場合、契約金とは別に何ヶ月分の預貯金があればよいのかの参考にもなると思います。
単に保証事業だけを考えるますと、審査と滞納は、相反する傾向にあり、利益を生み出し、事業継続性を高めるという観点では、審査を厳しくすることが自社保証では、採用されますが、管理会社から見れば、入居率に影響するので利用しないという結果になってしまうことにつながります。